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腐女子主婦の読書キロク

30代主婦で腐女子が読んだ漫画やら小説やらをを淡々とキロクしていきます

【BL感想】夜はともだち 井戸ぎほう 最後のシーンまでの盛大な前フリ

あらすじ

いたぶること、唯一ゆるされた愛しかた。ノーマル似非S×真性ドM。

――顔は可愛いのに、無口で無表情でミステリアスな飛田(とびた)くん。飛田くんが、実はゲイでドMだと知った真澄(ますみ)は、好奇心からサド役をかってでることに。プレイの終了は2人の繋がりも解消されるとき。しかし真澄はプレイメイトという限定された関係以上を期待するようになって──。

「SとM」。役割以上の繋がりを求めてはいけない……?

川の流れのような物語

SじゃないのにドMの飛田くんと仲良くなったことで、S役を買って出る真澄。
飛田くんは、プレイをしている時以外は表情もあまり変わらず、何を考えているのかがわかりません。

一方で、SじゃないのにSをやっている真澄は表情豊か。どちらかというと一般的なSとMの性格が逆転してる感じですね。

最後の数ページまで、真澄のモノローグで真澄の感情の揺れを表してるんですが、飛田くんの表情を抑えるからこそ、最後の数ページが光る。そういう物語ですね。

殴ることで見つける愛とそれでは見つけられない愛と

真澄は、飛田くんが前の恋人っていうかプレイメイト?と上手く別れられなくて待ち伏せされたりしてるところに遭遇。
結果的に飛田くんの性癖を知り、自分がプレイメイトに志願します。
多分この時は、面白そうっていう好奇心と飛田くんが好みの顔だからとかそれくらいの軽さで始めるわけですが、もともとSではない真澄はその行為が辛くなってきます。

自分はなんでも上手くやれる方だと信じて疑わない真澄だけど、どんどん行為の深みにハマっていってる自分が怖くなり、それを止めない飛田に対しても苛立ち始める。

プレイしてる時の飛田くんはびっくりするくらい素直でドMなんですが、それ以外の時は全く何考えてるか分からない。自分のこともほとんど話さない。

大きなイベントがあるわけじゃなく、プレイして、話して、学校行って。

そんな日常の中で、二人の感情がただただ淡々と描かれていきます。

最終的に、真澄は飛田くんを殴ったり、監禁したりするのだけど、普通の付き合いをしたい真澄にはどうしても自分のそういう部分が許せなくなり、別れることになります。

性癖が違うんだから仕方ない。

途中で少しだけ飛田くんが真澄に、「オヤジが頭おかしかったとか理解できる理由があれば安心して殴れるの?俺は好きでやってるのに」と呟くところがあります。

たぶん、今までのプレイメイトみんなに言われたんでしょうね。

そういう理解されない性癖を抱えていることの悲しさも垣間見える。

殴ること殴られることで見つける愛があって、真澄がそれに対して「飛田くんが僕を好きだと思ったことあるのかな」と返すのは、普通であるからこそ、その愛を見つけられないからですね。

どうしても交わるわけがない。

最後の数ページで飛田くんが大好きになるよ

飛田くんは別れる時に、真澄の気が向いたらまた僕に会いに来て。ずっと待ってる。と約束します。

たぶんそれから半年くらいが経って、真澄は飛田くんのところには行かず、普通に生活していたのだけど、突然飛田くんが学校で待ち伏せしています。

その時に誕生日に渡したものの理由や約束を守れずにごめんと泣き出します。

あぁこの作品はこのシーンのための盛大な前フリだったんだな、と。

飛田くんの感情の揺れが今までなかったからこそ、最後に飛田くんのことが分かって、そして真澄と同じく大好きになってしまいます。

そして、大好きになったままもう一巡読みなおしてみると、飛田くんのことがまた理解できて、なんだろう何度も何度も読みなおして、噛みしめるそういう素敵な作品です。

夜はともだち

夜はともだち

夜はともだち

[著]井戸ぎほう